
「きついっすね」。2選手の第一声は同じだった。全体アップ前の恒例となっている、陽と中田の特守。早朝の時点で、既にユニフォームの上半分が汗で変色している。彼らの努力を表すのに、言葉の装飾は必要ない。
今年の春季キャンプの一コマである。ふたりの三遊間が守備位置についているとき、他の選手がしきりに手を高々とあげ拍手をしていた。走塁練習中でセカンドベース脇にいた坪井が説明してくれた。「打球を捕ると同時に送球せず、球を握りなおしながら一歩二歩ステップ踏んでいる。まるでフラメンコやろ」。通訳から説明を受けたスレッジまでもが笑いながら、と同時に鬼の首をとったかのように、パチパチしていた。
それから9ヵ月を経た名護球場のグラウンド。先輩選手にちゃかされたまさにその場所で、二人は成長した姿を披露している。福良ヘッドコーチは「上手くなっている。春先とは比べ物にならない」と評価する。2月の時点では、技術と精神の両面で弱さがあった。守備の技術に自信が持てないため、あせる。結果、ボールをグラブの芯でとらずに捕球し、そこでしっかりボールを握らないまま、慌てて送球する。真喜志内野守備コーチが口を酸っぱくして言う。「派手なプレーはいらない。確実に一つアウトにすること。しっかり握って送球するためにのステップは、問題なし」。つまりステップを踏まずに済むのがベストだが、次善の策はしっかりとステップを踏むということだ。フラフラと見栄えのしないフラメンコは許さない。踊るなら、ミスなく確実に踊れ、と。「数をこなして慣れてきた部分はありますね」と陽は自己分析する。際限のない反復練習をこなすことで、守備に関して精神的余裕が生まれてきたようだ。真喜志コーチがそれを裏付けるように「技術面で上手くなっているのは確か。でも一番成長した部分は気持ち」と付け加えた。
全体練習終了後のサブグラウンドで、今日2度目の特守に挑む2人。真喜志コーチと三木コーチが付きっきりでノックの雨を降らす。それは、ずば抜けた才能を持つ彼らへ向けられた期待の表れだ。ボールケースにして2つ分のノックを終え、へたり込むように地面に腰を下ろした中田。間髪いれず三木コーチが「そんなつらそうな顔するな。ほんまは余裕なんやろ。だんだんお前のことがわかってきたわ」と冗談をとばす。照れるように笑顔をつくった中田は、小走りでメイン球場へと向かった。その様子を眺めながら、三木コーチが一言。「ああは言ったけど、このキャンプ中だけでも成長したよ、あいつ」。
9:45 全体ウォームアップ
10:05 キャッチボール
10:20 投内連係
10:40~12:00 行程(打撃、バント、走塁、ティー打撃)
ロングティー
ランチ
個人練習
コンディショニング
投内連係でグラブトスする豊島選手 |
渡部選手のブロック |
福良ヘッドのノック |
入念にティー打撃。糸井選手 |
予測不能な中嶋コーチのトス |
今度は前を向いて後ろへ |
休息のひと時。植村選手 |
今日のスマイル。坂元選手 |