2009/12/01(火)B☆B'sコラム

【#72】マスコットへの道

 このコラムを連載し始めてから、今まで随分多くの方から「コラムを読んでマスコットに興味を持った」「マスコットに対する見方が変わった」などという声をいただきました。僕が異論覚悟でこういうスタイルでコラムを書き続けている一番の目的はそこにあるので、そう言ってもらえるのは、僕としてはスゴく嬉しいんですよね(^^)。
 ところで、僕がそんな読者の皆さんにずっと聞いてみたかった事が、ひとつあります。

 皆さんの中に、「自分もマスコットをやってみたい!」という方っているんでしょうか?

 もちろん、興味本位で体験してみたいとかではなく、本気でマスコットを目指したい方がいるのかどうか、またいるとしたらどのくらいいるのか?って事です。
 たまーに、僕の元にも問合せが来るんですよ。「マスコットにずっと憧れています。将来どうしてもマスコットをやりたいんですが、どうしたらなれるんでしょうか?」といった感じで…。まず結論から言いますが、「こうしたらマスコットになれる!」という確固たる道は――現状特にないんです…。
 なんだか、ノッケから身もフタもない話ですいません(汗)。でも、これが事実です。僕が詳しく知るのはあくまでプロ野球マスコットに関してですが、普通求人誌とかに「マスコット募集!」なんて求人はまず出ないですし、日本の大学や専門学校などでマスコットについての知識やノウハウを教えている所は、恐らく皆無でしょう。マスコットの先進国とも言えるアメリカでは、「マスコットスクール」や「マスコットキャンプ」なるものがあるらしいですが…。
 でも、僕もそうですけど、マスコットをやっている者は現実にいる訳で…。じゃあ、みんなどうやってマスコットになれたのかと言うと、そこに至るまでの経緯はみんなマチマチですね。各球団マスコットの体制は様々だし、あまり詳しくは話せませんが、ごくごく大雑把に言えば大半が「口コミ」「たまたま」「売り込み」、この3種類に当てはまると思います。
 一番多いのは「口コミ」ですかね?この業界(?)は意外と狭いんで、その中で「○○球団のマスコットをやってみないか?」って情報が入ってくるといった感じで。二番目は、たまたま球場関連の全く別の仕事に応募したら、「キミ、マスコットやってみない?」と言われたクチ。最後の「売り込み」は、自分から「マスコットをやりたい!」と球団に直接売り込んだタイプですね。
 最初の2つはハッキリ言って運頼みでしかないんで、自分の力でマスコットの世界への扉を開きたい!と強く願うんだったら、最後の「売り込み」という方法に賭けるのがいいかもしれませんね。球場では身近な存在のマスコットも、いざ自分がその世界に入ろうと思うと意外に入り口が見えないもの。でも本当に本気な人は、自分から積極的に売り込んででもその扉をノックしてくるものです。僕も元はと言えば、そういうところから始まりました。単に売り込みと言っても最初はどうやったらいいのかわからないし、かなり度胸は要りますが…やり方は自分で見付けてほしいですね。
 まぁ、こういった特殊な世界なので、現実的にこうなってしまうのは仕方ないと思うんです。やっぱり「マスコット募集」なんて求人を堂々と出されるのは違和感を覚える人も多いでしょうし。僕もこの件に関して話すのを今まで躊躇していたのは、その辺がちょっと引っ掛かってたというのもある訳で…。でも、マスコットがこれだけ認知されてきたこのご時世、本気で「マスコットをやりたい」って人も決して少なくないと思うし、この広い世の中、マスコットという任務に物凄い適性や資質を持った人も、本気で探せばたくさんいると思うんですよね。そういう人達が、自分の能力に気付かなかったり、やりたくてもそこに至る道筋が分からずにあきらめてしまったりするのは、スゴく惜しいと思うんですよ。

 話は戻りますが、前述した「マスコットスクール」、僕もずっと気にはなってる存在なんです。学校でマスコットについて勉強するって、どんな感じなんだろう?一体どんな事を教えてくれるんだろう?って…。僕と仲良しのコンサドーレ札幌のマスコット、ドーレくんが何度かアメリカのマスコットキャンプに参加した事があったと言うんで、すごく興味があってどんな内容だったのか聞いてみたら、そこではダンスの練習や表現力を磨くレッスンみたいなものが主な内容だったみたいです。
 日本ではそういったカリキュラム的なものは――僕が知る限り、今のところなさそうですね…。将来的には国内にもアメリカみたいな「マスコット学校」的なものを作れればなぁ――なんて理想を描いたりもするんだけど、僕には今んとこその具体的なアイデアも自信もない(^^;)。そもそも、マスコットの仕事って学校で教えられる類のものなのかなぁ?って疑問もあるのは確かでして…。僕が思うに、マスコットの「根っこ」って、ある意味職人技みたいなところがあるんですよ。ファンとのふれ合いの中で、自分で実際に体で覚えたり、他のキャラの背中を見ながら技を「盗」んだり、って部分が…。ただ、そんな事ばかり言ってても、なかなか新しい人材は出て来ない。今後もずっと、今みたいにコネや運に頼ったり、自分で強力に売り込みする程の猛者が出て来るのを待つだけでいいんだろうか…?
 野球に限らずどんな分野においても、若い世代に後継者を育てていくってのは大切な事です。マスコットだって大勢の観客の前でパフォーマンスしたりファンサービスを行う重要な立場であり、そこにはプロフェッショナルな技術や心構えが要求されるものなので、本気でマスコットを目指したいという人を探し育てていくシステムを作っていくのも、自分達の一つの責任であると、僕は思うんです。

 今はまだ何のビジョンもないですけど、もし僕が将来新しい人材を探し、育てていくとしたなら、一体どんなところに主眼を置いていくのか――そんな事については、時々考える事はあります。僕が将来マスコットの任務を背負って立つ者に一番求めるもの、それは――アクロバットでもダンスでもなく、一にも二にも「ハート」、これに尽きますね。もちろん、派手なバク転やダンスが出来るに越した事はない。ただ、それはマスコットを始めてから特訓して会得する事だって出来る(もちろん簡単な事ではないけれど)。でも、「ハート」の部分はちょっとやそっとのトレーニングでどうこう出来るものじゃない。その人の生まれ持った性格や育ってきた環境が大きくモノを言うので、そういうところをまず見極めないといけないんです。
 「ハート」――それは、自分が常にファンと同じ目線に立って物事を感じられる能力だと思います。高い所からファンを見下ろすんじゃなく、もし自分がファンだったら、マスコットに何をしてもらえば嬉しいかという事を、常に考えて空気を読んでいく。これって意外と出来そうで出来ないものなんですよね。最初はその気構えでいても、経験を積んでいくにつれ逆に「慣れ」に押し流されてしまって、いつしか忘れがちになってしまう。僕も「これじゃいけない!」と思う事が今でも多々あるんです。
 だからそういう意味では、やっぱり元は「一ファン」から始まった人が適任かもしれませんね。自分がスタンドから野球を見る「ファン目線」を充分に知っている、そんな人が。ただ「選手に間近で会えるからマスコットをやりたい!」といったミーハーな動機で来られるのは、一番困ります。僕らは基本的に、ファンに背中を向けてはいけない。それが選手の方にばっかり目が行って舞い上がってしまってるようじゃ、マスコット失格ですから。
 そして、やっぱり自分でマスコットを演じる前に、しばらくの間「修行」が必要だと思います。しばらくはマスコットの傍に置いて直接いろんな人とのふれ合いを経験してもらい、何が必要なのかを肌で感じていく事が必要不可欠ですね。決して急いで「現場」には出したくないんです。

 こんな事言ってると、「近々B・Bにも仲間のキャラが登場か?」なんて早トチリする人、いるかもしれませんが…。でも断っておきますが、これは一般論として書いてるだけで、そういう意図では全くありません(笑)。世の中にどの程度マスコットをやりたい人がいるのかは分かりませんが、残念ながらマスコットというのは「枠」のある仕事です。現在日本のプロ野球には38のマスコットキャラがいますけど、この枠が空くか、もしくは新しく出来ない限りは入る余地がないのが現実なんですよね。決して楽な世界ではないけれど、やっぱり一度経験してしまうと不思議とみんな「ハマって」しまって、なかなか足を洗えなくなってしまう――必然的に枠が空く事はなかなかないんですが、逆に言えばそれだけ魅力ある世界だという事なんです。
 色々厳しい事も書いたけど、それでも本気でマスコットをやってみたいという夢を持っている方、いますか?それだけの強い意志があるのなら、決してあきらめずに是非チャレンジしてみて下さい。誰でも本気になれば、どこかからドアがきっと開くはず。経験者の僕が言うんだから、間違いはありません!