2010/02/26(金)B☆B'sコラム

【#74】無謀なる挑戦

――とりあえず、僕は生きてます(笑)。

前回の予告通り、2月14日の「札幌国際スキーマラソン大会」、25kmの部に出てきましたよー!そして…生きて帰って来ました♪大げさに聞こえるかもしれないけど、これが今の偽らざる心境です。

 「スキーマラソン」――初耳の方の為に一応ご説明すると、名前の通りスキーを履いて走るマラソンです。一般的なスキー板よりもっと細くて軽いスキーを履いて、アップダウンのある山の中の林道などを長距離走る競技で、「クロスカントリースキー」(クロカンスキー)という呼び名の方が一般的ですね。ちょうど今オリンピックをやってるんで、TVのニュースとかで目にする機会もあると思います。
 ハッキリ言って、上りはメチャメチャキツいです。同じ距離を陸上でランニングするより足腰に来る負担は大きい。脚だけでなく腕の力も使うんで、疲労が全身にきます。でも逆に下りで休める分、僕の個人的感覚で言うと、25kmとか50kmとかの超長距離は陸上より幾分とっつきやすい気がします。
 札幌は雪の多い街で、シーズンオフ期間中の大半が雪に閉ざされます。オフの間体力作りをしたくても、雪の中では思うように走り込みも出来ない。でも僕の場合、そんな季節にこのクロカンスキーがうってつけのトレーニングになるんですね。特に1月・2月あたりは毎年よくクロカンスキーで走り込みをやってます。
 北海道では冬の間クロカンスキーの大会がいくつもあって、その中でも一番大規模なのが、この「札幌国際スキーマラソン大会」。札幌ドームが発着点という事もあり、2006年から毎回参加させてもらってます。最初は5kmの部に出たんですけど、思ったより成績が良かった事もあり、翌年からは10kmの部に出てました。10kmも何度か出てるうちに、そろそろもっと上のレベルに挑戦したいな~…と思うようにはなってきてたんですが、10kmの上はいきなり倍以上の25kmという距離。ずっと二の足を踏んでたんですよ(^^;)。でもいつかは壁を越えなきゃ!と思うところあって、今回は第30回記念大会という節目である事にもかこつけて(?)、無謀にも挑戦する事にしました。
 25kmという距離は、常識的に考えたらマスコットにとっては正に「無謀」な距離です。そんな距離に挑戦したマスコットなんて、今までいないんじゃないかと思いますし(笑)。体力的な問題もさておき、25kmの部はレベルも今までとは全然違う。これまでの5kmや10kmの部は、あくまで「歩くスキーの部」。要は、普段あまりクロカンスキー経験のない一般の方が、ゆっくり楽しみながら滑りましょう――というのが主目的の部門だったんです。だから僕でも600~700人中10位前後の成績でイケてた。しかし25km・50kmの部は「スキーマラソンの部」、つまり競技志向の部門になってきます(もちろん一般レベルの参加者もたくさんいますが)。実際、上位30名くらいの名前を見ると、自衛隊とか実業団とか、全日本クラスの選手ばかり(汗)。コース設定を見ても、25 km・50kmコースは10km以下のコースよりもアップダウンがキツく、難度は格段に上がっています。今回25kmへの参加を表明(?)した後、「今回は何位くらいを目指すの?」「目標タイムは?」なんてよく聞かれましたけど、そんな状況の中で「上位を狙います!」なんて、とてもじゃないけどおこがましくて言えないですよ(^^;)。そもそも完走出来るのかどうかさえ、確信が持てない…。なので、僕はそう聞かれるたび「目標はあくまで『生きて』完走すること」と答えるようにしてました。冗談に聞こえたかもしれないけど、本当に生きて帰れるかどうかもわからなかったんで、大マジメでそう言ってたんですよ(笑)。

 僕がこの距離を無事完走する為に、重要な要素が2つありました。まずは天気。僕にとっては、太陽がどうしても必要だった。僕がスキーをすると「視界は大丈夫なの?」ってよく聞かれるんだけど、視界そのものは人が心配するほど悪くない。ただ曇りや雪の日は、雪面の凹凸がほとんど見えなくなっちゃうんですよ。全くの「白一色」で、半分手探りで滑ってる状態になってしまう。晴れて日が差していれば、雪面に陰が出来るのでハッキリ見分けられるんですけどね。これまでの大会で、晴れていた時と曇り・雪の日でタイムや順位にだいぶ差があったのは、これが原因です。日が出てないとコースの境界が全く分からなくて、何度もカーブでコース脇の新雪に突っ込んで転んではタイムをロスしてました。
 それともう一つが気温。長距離のレースでは、僕にとっての理想の気温は-5~10℃くらい。0度くらいだと、かなり暑く感じるんです。10km程度だったら、視界が悪かったり暑くてもまぁ何とかなりますけど、25kmという未知の領域への挑戦ですから、出来るだけ良いコンディションの中で滑りたかった。
 そんな訳で、当日は晴れて寒くなる事を心から望んでいました。大会1週間前からは、毎日何度も週間予報をチェックしてね。でもこんな時に限って、札幌の予報が良くなったり悪くなったり、毎日よくコロコロと変わるんですよ(^^;)。もう本当に気が気じゃなかった。
 準備に関しては、やれるだけの事はしたつもりです。僕は相変わらず時間に追われてあちこち飛び回る毎日でしたけど、寸暇を惜しんでは限られた時間の中で出来る限りの距離を滑り込んで…。でもさすがに、レース前夜は緊張のせいでよく眠れませんでした。

 そして迎えた本番当日――朝起きると、一番の気がかりだった空模様は、雲がやや多めのビミョーな感じ…。でもラッキーな事に、僕らのスタート直前になって素晴しく晴れてきてくれたんです。気温もほぼ理想の-5~8℃くらい。それだけでも、僕の心はちょっと軽くなりました。そして9時30分、いよいよスタート!
 スタート直後はコースがかなり混雑する事もあり、あまり無理して飛ばさず、とにかく人の流れに乗って気楽に進みました。最初から無理すると、精神的にキツいので。4km地点くらいからはだいぶ集団もバラけてきたので、自分のペースを掴んで進みます。まだ先は長い。あまり自分を追い込みすぎず、心地よいペースを守るようひたすら心掛けました。
 コースの中で一番気を遣ったのは下りの急カーブで、なるべく転ばないように気を付けてたんですが、それでもやっぱり3~4回くらいは転倒してしまいました。途中、長い上りも何ヶ所かあるんですが、中間地点を超えた13km過ぎあたりの上りは一番キツかったですね。もう本当に、心臓が破れるかと思うくらい。悔しいけど、途中で立ち止まらないと息が持たなかった。後半になるともう体に力が入らなくなってきて、ホンのちょっとの上りでもメチャメチャキツい。終盤は下り基調だし、残り数kmになれば心理的にも楽になるかと思ってたんだけど、その頃になると今度は脚とか肩とか全身あちこちにケイレンがきて…最後の最後まで、気の抜けない状況が続きました。しかし何とか力を振り絞ってゴール。タイムは1時間52分41秒、完走者533名中115位という成績でした。
 タイムや順位は気にしないと言いながら、100位以内に入れなかったのはやっぱりちょっと悔しかったですね。やっぱり25kmの部は甘くない。余談ですが、ゴールした時僕の口には自分で吐く息が凍ってツララが出来てたそうです(笑)。自分では全然気が付かなかったんですけど、それだけ過酷な環境の中で長時間走ってた勲章みたいなものでしょうか。

 気の早い人は「次は50kmに挑戦?」なんて聞いてきたりするけど、さすがにそれはないです(汗)。今回は25km何とか完走出来ましたけど、たまたま天候やコンディションに恵まれた上での事なので、毎年はちょっと厳しい。たぶん来年以降はまた10kmに戻って、何年かごとにまた挑戦しようかな、と。今年はオリンピックイヤーだったから、4年に1回とかも考えたんだけど、そうするといつもオリンピックの話題に埋もれちゃいそうで…。今回こんなに死ぬ思いで頑張ったのに、新聞記事であんまり取り上げてもらえなかったし(苦笑)。なのできっと、5年もしくは10年ごとの、記念大会に合わせての再挑戦がいいのかな、と今は考えてます。
 しかし、一体何の為にそこまでするのか?――疑問に思われる方もいるかもしれません。確かに、スキーマラソンの結果など「本業」のファイターズの成績には関係ないですし、25km走ろうが10kmに留めようが、それはマスコットの本分に直接関わってくる問題ではない。そこにあるのは、ただ純粋に「限界に挑戦したい」という僕の気持ちだけです。「マスコットには、これは難しいだろう」「マスコットなのに、よくこんな事が出来るね」って言われるの、僕あんまり好きじゃないんです。確かに、物理的な制約でマスコットには難しい事は色々あります。だけど僕らは毎年同じ事を繰り返してたら、やがて飽きられていくだけですからね。先月のディナーショーで作曲に挑戦したのもそうだけど、マスコットの可能性を広げていく為には、そういう「壁」を一つでもいいから取っ払っていきたい。今回の無謀とも言える挑戦も、そんな気持ちの一端だと考えてもらえればと思います。
 それともう一つ、自分が限界に向かって走る姿が誰かに力を与えられれば、って意味合いもあります。今回も寒い中、たくさんのファンの方が僕を応援に来てくれてたんですけど、ゴール前の走りを見て勇気付けられた、という声をたくさんいただきました。
 25kmもの長距離を走ってると、途中から大体同じくらいのペースの人と抜きつ抜かれつの展開になってくるんですよ。僕も7~8kmくらいからは、何人かの選手とそういう感じになってきた。でも面白いもので、そうこうしてるうちに、お互いの間に不思議な「友情」みたいなのが芽生えてくるんですね。もちろん会話なんて交わしてないんですけど。で、そんな感じでずっと前後を走っていた女性のランナーが、ゴール後僕のところに歩み寄ってきて「あなたがいてくれたから、私も頑張れた。本当にありがとう」って声を掛けてくれたんです。その一言は心から嬉しかった。それだけの為でも、25km走った甲斐があったと思いました。

 さて、毎年この大会が終わるとそろそろオープン戦も間近という時期。オフの間いろんなイベントに追われていた僕も、いよいよ「本業」に向けて心と体のモードを切り替えていく段階に入ります。今年もオフは本当にあっと言う間でしたけど、ご覧の通り僕はとにかく元気ですよ!また皆さんと球場で会える日ももうすぐ。また「いつもの毎日」が始まるのを、楽しみに待ってますね♪