2006/05/12(金)B・B'sコラム

【#30】試行錯誤の旅

 まずは現状報告から。ケガ(左ふくらはぎ肉離れ)の方は、今のところ順調に回復に向かってます。負傷から約5週間、現時点では軽く走れるくらいにはなりました。ただ、まだ走ると痛みは結構ありますね。全力で走れるようになるまで1ヶ月、更に「跳べる」状態に戻す準備に1ヶ月で、完全復活と言えるまでにはまだあと2ヶ月くらいはかかりそうです。普通に歩いてるの見て「もう治ったの?」と聞かれる事も時々ありますけど、まぁそう焦らないで(^^;)。肉離れをした事のある選手に聞くと、「治りかけが一番危ない」そうですから。7月くらいまではしばしお待ちを――。

 そんなワケで、ここから本題です。  札幌ドームに観戦に来られた方、今年から始まった「212物語」はもう見ていただきましたか?4月からは道内各地でのロケも本格的に始まり、今のところ撮影は順調です。北海道はこれからが一番良い季節なんで、この後のロケもスゴく楽しみですね♪しかし、今はまだ「理想の形」にたどり着く為に、試行錯誤を繰り返している段階です。実際やってみると、色々と難しい事がたくさん出てくるんですよ…。
 まず苦労するのが、ロケ日程のスケジュール組み。今のところ50弱ほどの市町村からこの企画についての問合せが来てるんですが、大半の市町村が希望してくるのは、町が一番盛り上がるような「○○まつり」「××フェスティバル」といったイベント日に合わせてB・Bに来てほしい、といった内容。これ、正直言ってキビしいです。僕の場合ホームゲームの他、マスコット交流・イベント・幼稚園訪問…等々の日程の合間を縫って、何とか月に3日程度スケジュールを確保しているのが現状。そういう「○○まつり」的なイベントは大体週末2日間くらいの開催で、しかも夏の間に集中したりするから、全ての町にそんな感じで行こうと思ったら、とてもじゃないけど日程が組めないんです。「あそこの町はイベントに合わせて来てくれたのに、ウチはダメなの?」といった不公平感をなくす為にも、原則的にそういった要望に応えるのは難しいと伝えてます。但し、出来るだけそれぞれの町の見所の一番「旬」な時期に訪問したいとは考えてますから、極力それに合わせて訪問日程を組むようにはしていますが。
 日程は、まず問合せのあった市町村に訪問希望時期を聞いてから、原則先着順で予定を入れていきます。がしかし、ここでまた頭を悩ますのが、訪問エリアの問題。例えば、今月ロケ日程として空けといた3日間に「来てほしい」と手を上げてくれた市町村が3ヶ所あったとします。しかし、その3ヶ所がそれぞれ道東・道北・道南…みたいに場所がバラバラだったら、3日間ではとても回り切れない(^^;)。ご存知の通り、北海道はとてつもなく広いんです。移動に半日かかるのなんてザラ。原則的にロケは1市町村につき1日しか取れないんで、充分な撮影時間を取ろうと思ったら、出来るだけ近いエリアで3ヶ所ずつ組んでいきたい…というのが理想なんですが、町によって旬の時期も違いますからねー。今年9月分までに関しては何とか日程を組めたけど、これから先毎年そうそう上手く日程が組めるかどうか不安です(^^;)。
日程を組むうちに分かってきたのは、訪問に適した時期っていうのはどうしても限られてきてしまうということ。やっぱり6~8月くらいの時期に訪問を希望する市町村が多い。秋の実りの季節や、逆に冬の美しさをアピールしたい町も、中にはあります。しかし、雪解け途上の3・4月や冬に向かう11月頃に来てほしいって所はなかなかないですね。僕の方の個人的都合から言えば、オフのそのぐらいの時期が一番スケジュールを空けやすいんですけど、世の中そうそう上手くはいかないモノで(^^;)。その辺を考えると、1年間で訪問出来る市町村数は27ヶ所ぐらいが限度かな?最初は1年30ヶ所強くらい回って、7年間で全道制覇…なんて目論んでたけど、年27ヶ所ペースだと物語が完成するまで8年くらいかかりそうです。

 さて、日程を組み、無事ロケも終了したとします。しかし、ここからが本当の作業の始まり。1日がかりで撮った数時間分ものテープは、基本的にロケ終了後の夜、その日のうちに全てチェックします。僕と映像スタッフの方と2人で、どういう順番でどの部分を繋いでいくかを大まかに決めていって。「鉄は熱いうちに打て」で、撮った内容をちゃんと覚えているうちに、編集のイメージを組み立てたいんですよね。実際にドームで試合の時に流す映像は3~4分間程度。どの映像をどの程度の長さに編集して、どこでどういう字幕スーパーを入れるかの指定も、基本的には僕が大体指示を出してます。そんな作業は映像スタッフに任せりゃいいじゃないかって声もあるかもしれないけど、何でも自分でやらないと気が済まない性分なんで(笑)。
 編集の過程でも色々悩みますねぇ。まず第一に考えなきゃいけないのは、どうやってお客さんに楽しんでもらえる映像にするか。B・Bがそれぞれの町を訪れて、町を紹介しながら住民とふれ合うというのが「212物語」の基本コンセプトです。でも、単なる市町村の観光PRビデオみたいになってしまってもつまらない。せっかく「B・Bが訪れる」んだから、B・Bを絡めたオモシロ映像を撮りたい。だけど、ネタに走り過ぎて町の魅力をきちんと伝えられなかったら、せっかく一生懸命ロケに協力していただいた各市町村の方々に失礼ですよね?町の魅力をしっかりアピールしながら、視聴者に楽しんでもらえる映像にする――その辺の微妙な折り合いが難しいところなんです。
 それともう一点、「212物語」は無声映画に近い手法で作っていかなければならないんです。理由は僕が喋れないから(笑)。この映像を作っていく上で、TVでやってる旅番組とかはいくつか参考にさせてもらってますよ。特に「日本全国ダーツの旅」とか。あれ、スゴく面白いですよね。特にこれといった観光名所のない小さな村とかに行っても、村を歩いてる人に突然インタビューしたりして面白い話を引き出してる。村の紹介もしっかり出来てますしね。ただ、あれとの違いはナレーションの有無。「212物語」も、ナレーション付きならもっと作りやすいのかもしれないけど、それじゃB・Bが訪問している映像と、ちょっとイメージが合わない気がするんですよね。だから市町村の紹介も、僕のコメントなんかも、全て字幕のみでやろうと思ったんです。
 ロケに行くと、住民とのふれ合いの場面で、もし僕が喋れればどれだけやりやすいだろうとはつくづく思いますね。訪問先で会った方々は、大体みんなニコニコして好意的に接してはくれるんですけど、僕の表現手段はボディーランゲージだけですから、なかなか映像にして楽しい「会話」が成り立たないんですよ。どうしても掛けてくれる言葉は大半が「頑張ってー」「応援してるよー」的な事か、時には相手までつられてパントマイムみたいになっちゃったり(笑)。身振り手振りだけで、どうやって相手の面白い一言を引き出すか――まだまだ修行が必要ですねぇ(^^;)。

 そんなこんなで、やっと映像が完成!――と、実はここでもう1つ、頭を悩ました事があるんです。それが、映像を流すタイミング。ちょっと長くなるけど、これについては球団公式サイト内の掲示板でも色々と議論が交わされていたのも知ってますし、中には誤解されてる方もいるようなので、きちんと僕から真実を説明させてもらいたいと思います。
当初、この「212物語」は「スイングスイング」の後番組的な存在として、試合中8回表終了後のタイミングで流したいと考えていました。去年までのスイングスイングの放映時間は、約1分半。だから、1分半程度の長さで各市町村を1~2回分程度に編集して放映しようというのが、最初のイメージでした。
 しかし、このオフにプロ野球実行委員会で導入が決まった「イニング・インターバル制度」というものを皆さんはご存知でしょうか?これは試合時間の短縮を目指したもので、今シーズンから攻守交代は2分15秒以内に行わなければならない――と厳密に決められたんです。攻守交代というのはあくまで、前の回3アウトになった時点から、次の回に審判がプレーを宣告するまで全てを含めての時間ですから、当然選手交代のアナウンスや、バッターの登場曲なんかも全てその時間内に収めなければならない。特に試合終盤の8回なんて、選手の交代とか結構多いですしね。その辺を差し引いて、シーズン開幕前に「映像は50秒以内にまとめてほしい」と演出担当から要請がきました。最初は要望通り、何とか1分前後くらいの長さで映像を作ってはみましたよ。それが最初の2話分です。でも、実際映像を編集してみて実感したんですが、1分って全然短いんです。視聴者に楽しんでもらえる映像にする為には、ある程度の起承転結は必要。それに加えて字幕を加えたり、市町村のPRポイントもきちんと押さえようとすると、どうしても3~4分は必要になってくるんですね。それをたったの1分やそこらに詰め込もうとしたら、せわしなくて味気ない映像にしかなり得ない。前・後編に分けてみたりもしたけれど、ただ半分に切ればいいという話でもないし、なかなか満足出来る映像にならない訳ですよ。
 それと、実際8回表終了後に流してみて感じたのは、ちょっと試合終盤の雰囲気にはそぐわないのかな?と。スイングスイングは景気のいい音楽を流して、スタンドのみんなで一緒に踊りましょう!というコーナーだったから、試合終盤で疲れてきた観客席を盛り上げる効果もあったと思うんだけど、どうにも「212物語」の雰囲気ではまったりとしてしまう感じがして…(苦笑)。
 公式サイトのBBSでは、「各イニング間を30秒ずつ削って、その分どこかのインターバルを212物語用に3~4分確保したらどうか」なんて極端な意見も出てましたけど、それは絶対に無理な話です。「212物語」も他のイニング間アトラクションも、あくまでもまず「試合ありき」で成り立つ事。「212物語を放送するから」って理由で試合を止めて選手を待たせるなんて勝手なマネ、僕の立場で出来る訳がありません。他にも1試合のうちに何回かに分けて放映すれば、という意見もありましたけど、試合中のイニング間は全てCMや告知、他のコーナーなどでビッシリ埋まってて、入り込む余地なんて全くないんです。「212物語」の枠だってやっとこ1つ確保出来たくらいなのに、更に他のコーナーやCMを潰せなんて言えないですし、3~4分の映像をただ1分ずつにブツ切りにすればいいという話でもない。
 そんな訳で、唯一充分な放映時間が確保出来たのが試合開始前でした。ところが試合前にも、皆さんの気付かない部分で物凄くいろんな制約があるんです。当然僕の希望としては1人でも多くの人に見てもらいたいから、出来るだけ試合開始に近い時間帯に放映してもらいたい。だから、演出担当と放映時間を決めていく時は、試合開始直前からタイムスケジュールを逆に追っていく形で話を進めていきました。  まず試合開始直前、スタメンの発表があって僕がフィールドで色々パフォーマンスをしている時間帯がありますが、ココは非常に厳しいです。スタメン発表があると、両チーム応援団が選手の応援歌を始めますから、まずそれが終わるまで待たなければならない。そしてその後というのは、日によってセレモニーや表彰などが入る事があって、それに時間が非常に左右されるんです。ここは試合開始直前という事で時間の調整もなかなかききませんから、万が一時間が押したりしたら、映像を途中でフェイドアウトするか放映を中止するか、または試合開始を遅らせるほかない。せっかく「この日にあなたの町の映像を放映します」という予告を見て来たのに、映像が途中で終わっちゃったとか中止になった…なんて事は避けたいですよね?だから、まずこの部分は不可です。
 次に候補に上がったのは、選手の守備練習中、先発バッテリー発表とスタメン発表の間の時間帯です。この時間帯、僕的に現状では一番理想的な時間帯だと思ったんですが、これは演出担当から直前になってNGが出ました(一旦この時間帯での放映を告知しながら、再度変更になったのはその為です。混乱を招いてしまって申し訳ありません)。NGになった一番の理由とは、演出上の「流れ」の問題です。演出サイドとしては、バッテリー発表→スタメン発表と、少しずつ球場を盛り上げていって試合開始を迎えたいというイメージがあるようで、その間に「212物語」の映像を差し挟むのは、その流れに水をさしかねないと判断したとの事でした。
 そんなこんなで、結局その前の時間帯、試合開始の約1時間5分前からの3~4分間が、最終的な「落ち着き場所」になったという訳です。その間にも時間があるじゃないか!と思う方もいるかもしれませんが、実は試合前とは言えCM・各種告知・打撃練習時間終了の場内アナウンスなど、決められた時間に流さなければならないモノの「制約」が物凄くたくさんあるんですよ。皆さんあまり気付かないかもしれませんが…。そんな制約に邪魔されず3~4分の時間を確保出来る、現状としては唯一の選択肢がここだったという事です。
 本意か本意じゃかないか?個人的な気持ちを聞かれれば、そりゃ当然本意じゃないに決まってますよ。せっかく苦労してロケして、寝る時間削ってまで編集した映像ですから、1人でも多くのファンに見てもらいたいのは当たり前です。僕だけの理想で物事を進められるなら、観客が一番入っている試合中盤くらいにドカーンと時間を作ってやりたいですよ。だけど現実そうはいかないでしょ?まずは「試合」そのものがメインだし、こういったコーナーは「212物語」だけじゃないから、他との兼ね合いもある。あんまり僕だけワガママ言う訳にはいかないんです(それでも最終的にこの放映時間に落ち着くまで、演出側に対して結構自己主張はしましたけど)。
 山ほどの制約の中で、万人に満足してもらうのは至難の業。理想的な答じゃないのは重々承知してるけど、色々と手を尽くした結果、現状ではこうする他なかったのは分かって下さい。これは僕も色々話し合った末に自分で納得したことです。球団がファンの気持ちを一切考えず、ただ単に「早く球場に来い」と言わんばかりに一方的に時間変更の断を下したような印象を持たれた方もいたようですが、そう思われたのは正直言って非常に残念です。ここまで詳しく理由を話せば、理解してもらえるとは信じたいところですが…。
もちろん、打撃練習中に放映する事に関しての危険性とか、もっと根本的な事を言えば、試合を時間通りキッチリ進行させるという「こちら側」の都合が「ファンに楽しんでもらう」事より常に優先されていていいものか?という疑問は残りますよ。それは今後の大きな検討課題ですね。今すぐというのは僕の力だけでは難しいけど、時間をかけて改善出来る所は改善していきます。
 それから、せっかく作った映像を1人でも多くの人に見てもらいたいという気持ちは変わらないので、そこは何らかの対応策を考えてますよ。例えば「B・B’s Room」にモニターか何かを置いて、今までの映像をいつでもビデオで見られるようにしておくとか、何らかの機会にビジョンで再放送するとか、1年分を1巻ずつにまとめてDVD販売をするとか。費用面の問題とかもあるので、まだ約束までは出来ませんが…。とにかく1回きりの放映で終わらせてしまうつもりはないので、そこは期待しといて下さい!

 あと余談ですが、「スイングスイング」は今まで通り、8回表終了後の枠で残る事になりました。元々あれは単純なダンスをスタンドのファンみんなで踊って、それをビジョンの映像で抜いて楽しくやりましょう、というコンセプトのコーナー。それを僕がネタを織り交ぜながら色々カラみ始めた事で「B・Bのコーナー」みたいな印象になってしまったところがあるんですよね(^^;)。それはそれである意味名誉な事なんだけど、せっかく人気のコーナーとして定着してたんで、ここは元の基本コンセプトに立ち返って継続しましょうという事です。僕もネタがある時はたまにやるかもしれないです。なければないで、球場内の色んな場所に出没して踊ってますから(笑)。

 こんな感じで、始まったばかりの「212物語」はまだまだ試行錯誤の段階ですが、苦労すればするほど完成した時の喜びは大きいものなんでしょうね。回を重ねるごとに少しずつ球団が全道に浸透しくのを感じ、8年経ってこの物語が完成した時、ファイターズが真に北海道に「根付いて」いてくれるのを願いながら、僕は旅を続けたいと思います。