2006/06/19(月)B・B'sコラム

【#31】交流のウラオモテ

 交流戦ももう終わりですね。交流戦期間中は、僕にとって最も忙しい季節かもしれません。と言うのも、ご存知の通り交流戦期間中はマスコット交流が一番盛んに行われるからです。以前このコラムでも書いた通り、マスコットの活動はホームゲームが中心。僕は普段、チームがビジターに出ている間は地元で幼稚園・保育園を訪問したり、「212物語」のロケに出たり、イベントに出たり…と、それはそれでやる事は沢山あるんだけど、もう一つ僕にとって非常に大切であり、そして楽しみにしている事が、このマスコット交流なんですよね。

 先日ある新聞で「交流戦で楽しみな事」についてファンの声を聞いたところ、「マスコット交流が見られる」と答えた方がかなりいました。最近はファンの間でマスコットの注目度が随分上がったんだなぁ…と、嬉しく感じたものです。しかし、マスコット交流は昨今始まった事ではなく、また交流戦だからと言って、必ずしも全カードでマスコット交流が行われた訳ではないのは皆さんご存知でしょうか?
 僕が知る限り、マスコット交流自体は10年以上前から行われています。千葉ロッテなんかは以前からかなり積極的にやってましたし、セ・リーグも何年か前、確か夏休み期間中に全チームのマスコットが交流するという試みをしていました。但し、マスコット交流の注目度アップにセパ交流戦が大きく貢献しているのは間違いないでしょう。
しかし現状では、マスコット交流の有無はあくまでも各球団の自主性まかせで、球団によってその頻度は全くバラバラです。交流戦期間中全ての球場に出向いたマスコットもいれば、ほとんど交流を行わなかったところもある。では、そういった差が出るのはナゼか?理由は一言で言うと、各球団のマスコットにかける温度差だと思いますね。より正確に言えば、それぞれの球団の担当者(営業担当者などの場合が多い)がどれだけマスコット交流の意義について真剣に考えてくれているか、そしてその意見を球団がどれだけ汲み取ってくれるかって事です。
 マスコット交流の成立までには2つの過程があって、まずは相手球団の了承を得るところから始まります。まあこれは「来る者拒まず」で、余程の事がない限り断られる事はありません。しかし、難しいのはこの後、自分の球団の了承をもらう事の方なんです。
 ビジターの試合に出演する為には、現実的な話交通費・宿泊費等の経費がかかります。基本的に、そういった経費は自分のところの球団持ちです。目先の事だけを考えて言えば、マスコットがビジターに出たからと言って、自分の球団にとっては一銭の収入にもならない。それなら何故行くのか?どの球団でも、いや、球団に限らずどんな会社でも、出張の際にはその必要性や意義についてきちんと説明出来なければ、当然ながら承諾は得られないですよね。僕の場合、こういう時には「こちらがビジターに行く見返りに、相手マスコットにもウチのホームゲームに来てもらう。それでホームのファンが喜んでくれるんだから、充分やる価値はあるんじゃないですか?」という感じで説明しています。但し、この理屈が通る為には、相手チームのマスコットにもこちらに来てもらう必要がある。中には何度こちらがビジターに出向いても、「経費がかかるから」と一向に自分のところのマスコットを寄越してくれない球団もありますから、残念ながらそういうところには、こっちも必然的に行きづらくなりますね。それから、声を掛けても応じてくれそうにないな…とか、交流をしてもあまり得るモノがないな…と感じた場合には、あえてこちらから声を掛けない時もあります。マスコット「交流」と言う以上、片道通行だけになってしまったり、そこから何も得るものがなければ、その意義が半減、いやそれ以下になってしまいますから。
 その他にも、ビジター出演を許可してもらう為に色々と頭を使ってますよ。東京ドームでのファイターズ主催試合の前後に日程を組んで交通費を浮かすとか、それからウチの場合は親会社の関係で、日本ハム社員の応援デーに合わせて行くとか、試合前にビジター球場近くの日本ハム本社や工場に慰問をするとか…。マスコット交流が大いに意義のある事だというのは、ファンなら誰もが認めてくれるところでしょうけど、その成果はなかなか収入など直接的な数字で表せない部分が大きいんで、その辺を球団に納得してもらうのは何かと大変なんですよ(^^;)。

 まぁ予算的な話は別として、マスコット交流は僕達にとって物凄く重要なものです。まず第一に、ファンがスゴく喜んでくれる。他のマスコットとのコラボは滅多に見る事が出来ませんからね。だからウチのホームゲームに相手マスコットが来てくれた際、僕的に必ずしておきたいのは相手マスコットとの「絡み」。やっぱりファンにとっては、「B・Bと○○はどんな絡みを見せてくれるんだろう?」っていうのが一番楽しみにしてくれてる部分だと思うんで。ウチのホームの場合はこっちの流儀に従ってもらうのが基本なので、僕と相手マスコット合同でのグリーティングと、試合前にグラウンド上で「共演」出来る時間は必ず設けるようにしてます。
 マスコット交流の時に一番幸せを感じるのは、相手球団のファンにも温かく受け入れてもらえた時ですね。自分のチームのファンに喜んでもらって嬉しいのは当たり前だけど、基本的にマスコットに対しては相手のファンも優しく接してくれますから。「今日は勝つからな!」みたいな感じで口では少々手荒い事を言ってはいても、顔はニコニコ笑ってる(笑)。そして笑顔で肩組んで写真撮って、これで充分心は通じ合えます。こういう場面では、みんな「どこそこのチームのファン」と言う以前に、「プロ野球のファン」でいてくれてるんだなぁ…って、なんかあったかい連帯感を感じるんですよ。特にセ・リーグのチームのファンの場合、交流戦以前にはファイターズに全く興味も知識もなかった人も多いかもしれない。そういう人達に僕が窓口となってファイターズ自体への親近感を持ってもらえるならば、こんな嬉しい事ないですね。自分のひいきチームと同時にパではファイターズを応援してもらう事だって出来なくはないから、ファン獲得の大きなチャンスでもありますし。
 マスコット交流は、ファンだけではなく僕らマスコット自身にとっても大きな収穫。相手マスコットと一緒に行動する事は、大いに刺激になりますね。ファンサービスであれパフォーマンスであれ、普段自分達だけで完結して「良し」としていたものが、「こんなやり方もあるんだ…」「自分はもっと頑張れるんじゃないのか?」なんて気付く事が多々ありますから。やっぱり、井の中の蛙じゃ成長も限られます。ちなみに今年の交流戦の出張率(?)№1は文句なしで中日のドアラでしたが、球団の担当者の方が「ドアラはこの交流戦で随分と成長した」って言ってましたよ。
 交流が増えた事によって、マスコット同士の間の横のつながりも、以前と比べたら格段に深くなりましたね。マスコット交流の時にはよく試合の後一緒に食事しに行ったりしますから、大抵ビジターの時と相手が札幌に来た時と、2回は一緒にじっくり色んな話をする機会が持てる(笑)。お互いの連絡先も交換し合って、よく情報交換したりしてますよ。こういう特殊な仕事柄、お互いの気持ちが一番良く分かるのはやっぱり「同業者」同士ですから。マスコット交流が盛んになって、オールスターでも全員集合がかかるようになって、僕らマスコットにとっては随分と良い時代になったモノです(^^)。
 それから他球場に出掛けるメリットは、いろんな球場を見て勉強出来ること。マスコット交流は3連戦のうち2試合だけ、って事多いですよね?これは衣装の搬送・曜日の関係・体力面などの理由もありますが、もう一つ大きいのは、出演しない1日を「偵察日」として有効利用する為なんです。決して1日ブラブラ遊んでる訳じゃないんですよ(笑)。
 僕はこの「偵察日」には、特に初めて訪れる球場の場合、極力球場内をあちこち歩き回るようにしています。他球場の施設やファンサービス・演出なんかは、見て勉強になる事が多々あるんですよ。せっかく球団にお金出してもらって出張してる訳ですから、少しでも多くを吸収して帰りたい。言葉は悪いけど、相手の良いものはどんどん盗みたいし、逆にもし相手がウチの試合を見て何か参考にしたいと思うものがあるのなら、どんどん盗んでもらっていいと思ってます。
 交流戦中セ・リーグの球団の方がマスコットに付き添ってビジターに来られた時、パの球場演出のアイデアやファンサービスの内容、それからパのマスコットが全般的にファンと直にふれ合える時間を多く取っている点について感心されてる姿を何度か見ました。こういうモノはもう遠慮なく取り入れてほしいですね。念の為言いますが、別に僕はセのファンサービスがパに比べて劣っていると言ってるんじゃないですよ。セはセなりの、パはパなりの事情やこれまでの慣習があってこういう形に落ち着いてきただけなので…。実際セの球場に行って、向こうの演出やファンサービスで参考になった事も多々ありますしね。

 セパ交流戦の導入、それに伴うマスコット交流の活性化によって、僕達にとってはそういった「ネットワーク」が飛躍的に広がりました。交流戦は、表面的にはセパのチームが対戦するという目新しさばかりが注目されますが、本気で野球界やマスコット界の発展を考えるならば、僕は交流戦の一番の功績はこの「ネットワークの広がり」にあると思っています。お互いが交わる事によって違うスタイルもある事を知り、刺激を受け合える。そうやって互いを高め合う事こそが本当の「交流」というものなんじゃないでしょうか?目先だけを見て「マスコットがビジターに行ったって一文の得にもならない」なんて心の狭い事は言わないで、そのうちどのチームもせめて各カード1回ずつくらいマスコット交流を行ってくれるようになったら、プロ野球はさぞかし楽しくなることでしょうね。