異色経歴社員が語る、BP構想への想い。
2019年8月「NumberWeb」に掲載(名称等は当時のもの)
宮田文久=文 (text by Fumihisa Miyata)
松本輝一=写真 (photographs by Kiichi Matsumoto)
海外の名物スタジアムで得た知見。
そんな小川さんは、非常に興味深い経歴を持っている。スポーツ好きの帰国子女だった彼は、学生時代よりスタジアムという存在に魅せられながらも、2017年にこのプロジェクトに参加するまで、スポーツビジネスの専門家ではなかったのだ。
「少年時代からサッカーが好きだったんですが、強豪高校のサッカー部に入っても芽が出なかった。それでもスポーツに携わりたい、どうしようかと考える中で、スポーツビジネスに興味を持つようになったんです。
大学のゼミでは、特に海外のスタジアムに足を運び、強く興味を惹かれました。たとえば、MLBボストン・レッドソックスの本拠地、フェンウェイ・パーク。球場が、隣り合うストリートと一体化したボールパークです。FCバルセロナを見に行ったチャンピオンズリーグでも、カンプノウの熱狂に感動しました。今でこそ経産省とスポーツ庁から『スタジアム・アリーナ改革』が提言されていますが、こうした“リアルな空間”は、これから日本のスポーツビジネスにおいても伸び代があると感じ、将来的に手掛けたいと思うようになったのです。
ただ、大学卒業当時はどの方向に進めばスタジアムをつくることができるのかわからなかった。まずは海外で働いて経験を積むことから始めようと、大きなプロジェクトを手掛ける商社に入社したんです」
スポーツは人が“集い”、何かに“出会う”。
約7年の月日を商社で過ごし、東南アジアでのプラント建設という大規模かつ多国籍メンバーで構成されるチームで推進するプロジェクトに携わった。その仕事に夢中になりながらも「いつかスタジアムを」という思いが、再び首をもたげる。小川さんは2年間、スペインのバルセロナにMBA留学することを決めた。
「新鮮な環境で学びながら、じっくりと物事を考える時間をとりたかったんです。欧米の先進的なスタジアム事例をスタディしながら卒業後の進路を意識して設計会社、競技団体、代理店など様々な人たちに話を聞いていた時に、ひょんなことをきっかけに北海道ボールパークというプロジェクトのこと、そしてそこでメンバーを探していることを知りました。
コミュニティの創出にスポーツが役立つ――そうしたまちづくりの側面が大きいこのプロジェクトに、一気に惹かれました。スポーツは、人が“集う”ものです。そしてスポーツにかかわるということは、人が何かに“出会う”ということだとも思うんです」
まさに出会いによって、北海道ボールパークに傾注することになった小川さん。プロジェクトの全体像が少しずつ明らかにされつつある今、練りに練ったアイデアが徐々にオープンになっていくプロセスは、とても楽しく刺激的なものだという。
photograph by Tomoki Hamano

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