試合情報

　ラバーが地面に埋めてあるのかと疑うほど異常に弾む西武ドーム独特の打球は、新しい人工芝に張り替えたくらいでは防げなかった。志願の9回続投でチームを救おうとしたダルビッシュにとっては、あまりに酷な結末というしかない。片岡の凡打が3塁手・稲田の頭上を越えライオンズナインがベンチから飛び出してきてもなお、エースはマウンドに立ちつくした。

　３，４月度月間MVPを受賞したダルビッシュは、試合前、宿舎での会見に挑んだ。簡単な事前打ち合わせをするため彼と会ったとき、鼻をすすりながら話を聞く姿が気になった。
「どうやら風邪を引いたみたいです」トレーナーのケアをしっかり受け、いつも抜かりなく体調管理をしているダルビッシュにしては珍しい。今日のコンディションは決して万全ではなかったはずだ。しかし会見でも「普通に投げれば勝てる自信もある。
チームみんなで協力して戦っていきたい」と、普段通りに堂々とした立ち居振る舞いで、フォアザチームを強調した。

　敗戦に一切、言い訳をしない選手だ。試合後、ロッカーに戻ったダルビッシュは、しばらく考え事をするような表情をしながら無言で着替えを始めたが、通りがかりに「ナイスピッチング」と声をかけるチームメイトには丁寧にうなずいて応えた。その後、ベンチ裏に余っていたロールパンにバターをいっぱい塗り、立て続けに3個ほどほお張った。試合中に一度も途切れなかった集中から開放され、腹が減っていることに気づいたのか。彼のゲームへの入れ込みの深さと責任感の強さを垣間見た気がした。

　試合が終わり、重苦しい雰囲気のまま羽田の宿舎へ向うバスに乗り込むと、たくさんのピザが置いてあった。腹をすかした仲間たちへと、グリンとスウィーニーが差し入れをしてくれたのだ。その場は一気に笑顔になり、即座にピザにありつく者もいた。
だがみんな、そのピザにかぶりつく前にちゃんと手を拭いたか。今日のゲームを振り返ったか。次への反省はあるか。ダルビッシュだけが一所懸命だったとは、決して思わない。みんな必死に戦っている。だからこそ、ピザの本当の温かさを感じるべきは、今だろう。ファイターズらしい戦いが出来るか否かは、勝敗への当事者意識を皆が持てるか、持てないかにかかっている。この連敗は、戦い方からいって早く脱出しなければならない。グリンとスウィーニーも、きっとそう言いたかったに違いない。

「ダルビッシュ志願の9回続投だったが、最後は不運なあたりで、力尽きたかな…中村に打たれた本塁打よりも5回の細川の1発は悔いが残るね…ただダルビッシュも決して良い状態ではなかったにも拘らず、9回まで良く投げたと思います。最高の状態を維持するのは難しいし、悪いなりに試合をつくってくれた点では、初めての敗戦ながら評価したいね！！L涌井投手の出来も決して良くなかったが、6回まで残塁9とあと1本が出ず、続投させてしまったのが今日の勝敗の分かれ目かな…ただ本音を言わしてもらえば、エースダルビッシュでの負けは正直なところ痛いね。この9連戦を5連勝、4連敗と勝ち越したにも拘らず、反省すべき点は大いにあるね！！順位を気にする時期ではまだないけれども1試合1試合大事に積み重ねていく事が必要！！函館ではファンの皆さんに是非喜んでいただける試合をしますので、応援よろしくお願いします！！」