

■広報レポート <熱くなった女神>


冷静沈着。スレッジを表現するにふさわしいと思われたイメージはこの試合を境に一気に崩れた。3-1の3回、目の前で稲葉が敬遠された愛称「T」は大場の外角ストレートを来日初の満塁弾に変えるとほえた。目の前に立つ力一杯こぶしをぶつけた。「野球以外で興奮したのは子供と初めて対面した時くらい。実につまらない男だからね」と意外な一面を垣間見せたのを恥ずかしそうに振り返った。
ファイターズに加わって11本目のホームランだが、稲葉とのアベック弾は実に5度目を数える。うち3試合はスレッジが打った後に稲葉も続いたもので「イナバさんには“僕が君にとっての女神だよ”と言っているんだ」と胸を張る。不思議なめぐり合わせだが、どちらかに1本出ると自分にも、と思える関係は心強いことこの上ない。
満塁ホームランは米国時代に1度あるだけという。「地球の反対側で経験できるなんて思ってもみなかったよ。地球の反対側にみんなあったかいファンがいることも知らなかったけれどね」。山中通訳がスーツ用のベルトがなくて困っているとプレゼントしたり、グリンと共に児童福祉施設の訪問を計画するなど、プレーしやすい環境を与えてくれる周囲への恩返しを常に考えている。
2人で全9得点を挙げて上がった初のお立ち台では盟友が北京五輪召集でチームを離れる可能性について触れられ「行かないでほしいね」とささやいた。それを聞いた稲葉も「まだ行くと決まったわけじゃないんで、コメントしにくいけれど“どうぞ行って来て”と言われるよりうれしいよ」と表情を崩した。IT砲のコンビが7月に見られるのはあと14試合。相思相愛ぶりが形になればなるほど、暑い夏を楽に乗り越えられる。
■多田野投手 <6回、打者27、球数97、安打7(本塁打2)、三振2、四死球2、失点4、自責4>

「点をこれだけ取ってもらい安心感はあったのですが、投球のリズムがよくありませんでした。序盤はスイスイいけそうな感じでしたが、途中から球数が増えてリズムに乗れなかった。3回から毎回先頭打者を出して失点してしまったのは次に向けての反省点です。」
■梨田語録

「F先発多田野はコントロールも甘くボールも高かったね。大量リードをもらいながら、先発を含めブルペン陣が小刻みに点を取られ、最終的には3点差まで詰め寄られたところが、今日の試合の課題ですね。じわじわと点を取られる嫌な展開の中、主砲稲葉・スレッジがチャンスで本当に良く打ってくれました。球場に足を運んでくれた多くのファンの皆さんの大声援が選手の背中を強く押してくれました!ありがたいことですね!!」