試合情報

　全身にその感触が駆け巡っていました。おまけに、その余韻はなかなか薄れることはありませんでした。ベンチ裏に戻った森本選手は、両手を開いて交互に見つめながら声を張り上げました。

　「何、この感触!!」

　試合を決定づける一打は、3点リードの五回に飛び出しました。先頭打者の金子誠選手が左前打で出塁し、首位打者の田中賢選手が右前打で続きます。そこで打席に入ったのが森本選手。カウント1ストライクからの2球目、ストレートをフルスイングすると、打球は一直線にバックスクリーン左へ吸い込まれていきました。

　今季2号3ランは、森本選手には珍しい“引っ張り”でたたき出したもの。狙いは犠牲フライだったといいます。遠くへ飛ばせるボールを待ってバットを振り抜いた結果が、最高のシナリオとなりました。「ヤバイ!この感触!!完ぺきでしょホームラン!!」。談話用にコメントするときの興奮した表情も印象的なものでした。

　森本選手に続いて稲葉選手も左翼席に14号ソロを放ち、今季初の2者連続本塁打を記録しています。ゲーム中盤で勝負アリ。投げては武田勝選手が8回無失点と持ち前の安定感を披露し、6勝目を挙げています。

　一回には相手先発の立ち上がりを攻め、1死三塁から小谷野選手が中前に先制適時打を放ち、続く糸井選手が右翼席に10号2ラン。先行逃げ切りのパターンを作り、ダメ押しにつなげました。結果的には一発攻勢での勝利だったとはいえ、2番から5番までが打点を挙げる理想的な試合運び。どこからでも点が取れるファイターズ野球は健在です。

　今回の遠征9試合で7勝2敗。リーグ戦再開後は6カード連続の勝ち越しを決めています。貯金は今季最大の「2」となり、Aクラス入りは秒読み段階といっていいでしょう。9日からは北海道に戻り、バファローズを迎え撃ちます。

　遠征に出る前、6月27日のヒーローインタビューで、田中賢選手が何と言ったか覚えているでしょうか。「WE LOVE HOKKAIDOシリーズまでに貯金を作って、皆さんとまた一緒に戦いたい」。その言葉は見事に実現しました。快進撃を続けるファイターズの戦い、お見逃しなく!

「前回、点を取ってもらったのに粘れなかったので、今回は絶対抑えるという気持ちでいきました。ヒットを打たれても点を取られないピッチングができたので、次回に向けてもしっかり調整したいと思います。」

「初回の勝（武田勝選手）は自分のベースカバーが遅れたのもあったけど、そこで点をやらずに主導権を握ることが出来た。5回には先頭打者を出したところで、奨太（大野選手）が完璧な送球で（盗塁を）刺して流れを止めてくれた。それが5回裏の得点につながったね。初回に先制したけど、流れはどっちに転んでもおかしくなかった。ひちょり（森本選手）のホームランなんてだれも予想してなかったからね。借金が14もあったんだから、何が起こるかわからない。貯金が増えたけど、明日からもその時その時を大切に一つ一ついい方向へ行けるようにやっていきます。」