

■広報レポート <風を呼んだエースの責任感>

最後の打者を空振り三振にしとめた瞬間、マウンド上のダルビッシュ選手は、強くこぶしを握り締めて大きな雄叫びを上げました。そして、興奮を抑えられない表情を浮かべて、チームメートと勝利のハイタッチを交わしました。ようやく笑顔を見せたのは、スタンドの大歓声に応えてお立ち台に立ったとき。この一戦に賭ける強い思いを全身で表現するピッチングでした。
立ち上がりはピンチの連続。一回、二回と先頭から2者連続で出塁を許しました。それでも、粘りの投球で無失点に切り抜けると、三回に3者連続三振を奪ってからエンジン全開。尻上がりに調子を上げ、バファローズ打線に1点も与えることなく最後まで投げ切りました。
「大事な試合の方が気持ちが入るというのはあるかもしれません」。チームの状況、さらに、自らの立場――。すべてを把握した上でダルビッシュ選手はマウンドに上がっています。八回までで134球を投げながら続投を志願したのも、エースの責任感からでした。
「5連戦の最初を任されたわけですから。明日から、ブルペンの人たちがうまく回っていければいいなと」
五回1死二塁で打球を左太ももに受けても、マウンドさばきは変わりませんでした。「ああいうのは慣れてるんで。痛いというのを見せないで投げないと」。まったく動じない姿がチームメートやファンを勇気づけたのは間違いありません。
ダルビッシュ選手の12勝目で、チームは今季初の貯金5。過去4度越えられなかった“壁”をぶち破ってみせました。同率3位となり、クライマックスシリーズ圏内に浮上。風は確実に吹き始めています。一戦一戦しっかりと戦うことによって、風は嵐になり、嵐は台風になります。台風の目となっての残り8試合。熱い勝負はまだまだ続きます。
■ダルビッシュ投手 < 9回、球数146、打者36、安打8、三振11、四球2、失点0、自責点0>

「要所要所をしっかり投げれればいいと思っていました。九回が一番よかったですね。大事な試合で投げた方が、気持ちが入りますね。」
■梨田語録

「カードの初戦を取れたのはチームにとっても、ファンにとっても非常に大きい。ダル(ダルビッシュ選手)は初回、2回と不安定だったし球数も多かったけど、先に点をやらなかったのはすごい。エースとしての意地、チームを思う気持ちがあって、ボールが当たって痛かっただろうけど、そんな中での完封でした。8回に陽のタイムリーで3点目を取れたのは非常にチームにとって大きい。勝敗を分けた1点でした。」