試合情報

　「2000本を打つために野球をやっている訳じゃない。監督を胴上げするためにやってるんで」。ヒーローインタビューを受ける稲葉選手の言葉に、栗山監督は思わず目を細めました。いつもと同じ1勝のつもりでも、いつもとは違ううれしさがジワジワと沸き上がっているようでした。プロ野球チームの監督となって勝ち取った16勝目は、最高でも年に一度だけの“バースデー勝利”だったからです。

　指揮官が日頃から話すファイターズの素晴らしさ。それはチーム全体が勝利のために自己犠牲を厭わない心です。この日は先制される苦しい展開。「ベンチでツル（鶴岡選手）が『監督の誕生日なんだから打ってやれよ！』とゲキを飛ばしてくれてね。申し訳ない気持ちだった」と苦笑いしました。それでも、4回にホフパワー選手が同点ソロを放つと、6回には稲葉選手が1999安打目となる決勝弾を右中間スタンドへ。「（誕生日だからとか）個人的なことはゼロなんだけど、みんなが何とかしたいという気持ちがあってありがたいね」と感慨深そうに話しました。

　開幕8カードで16勝8敗。貯金は今季最多の8に伸ばし、再びリーグ単独首位に立ちました。2本の一発で試合は決まっても、勝利に向かうベンチの思いはひとつ。最後を締めた武田久選手からウイニングボールを手渡された栗山監督は「ありがとう！大切にするよ！」。そして、この1勝への思いを問われると、目尻を下げながらこう話しました。「一生忘れられない、これ以上ないものになりました」――。

「何とか最少失点に抑えられたのは良かった。いつものように奨太（大野）がいいゲームメークをしてくれたし、バックも守備で盛り立ててくれたと思う」

「稲葉は勝つためにここ一番でいい仕事をしてくれるね。（打席の中で力が入ったり緊張したりという）嫌な感じはしたんだけど、あそこで立ち直るんだからすごい。ウルフも5、6点取られてもおかしくない状況で、早く追いつかないとズルズルいきそうなところでホフパワーがね。（スタメン出場は）ホフパワーが俊介（渡辺選手）に合っているというのをコーチから聞いていたから。そういう意味でもみんなで勝っていくということ。増井もいつもよりボールが来てなくて、疲れが来るころではあるんだけど、その中で踏ん張り切れると野手やベンチの信頼というものにつながっていく。点差以上に意味のある試合だったね」