試合情報

　赤く染まったスタンドが静まり返る分だけ、ベンチの熱気は高まっていきました。4点を追う9回。1死から加藤選手が相手失策で出塁し、2死2塁となってからがドラマの始まりでした。二岡選手、小谷野選手の適時打で1点差に迫ってなお1、2塁。ここで不振に悩む4番・中田選手が登場しました。

　「（地元・広島で）応援してくれる人がたくさん来てた。賢介さんがフォアボールで歩いたときに自分も興奮したし、絶対に打つしかないと思ってました」。追い込まれても集中力は切れず、変化球を強振。すると打球は左翼フェンスに直撃しました。値千金の同点適時二塁打で試合を振り出しに戻しました。続く稲葉選手が相手内野手の適時失策を誘って勝ち越しに成功。4点差をひっくり返す劇的な逆転勝利を挙げま
した。

　序盤のチャンスをモノにできず、もどかしい試合展開。その中で最終回の攻撃に勢いをつけた守備があったことも見逃せません。4点差に突き放された8回1死満塁。ライナー性の当たりを中堅・陽選手がダイビングキャッチし、二塁に返球して併殺に。「指示もあったけど、（相手打者だった）石井さんがどういう打者なのかを考えて、レフト寄りで前目に守ってました」。好プレーは偶然には生まれない。それこそ栗山監督が目指す野球です。

　投手陣が崩れても打撃陣が盛り返す。最高の形で勝利を挙げ、3勝1敗でセ・リーグ本拠地での交流戦スタートを乗り切りました。北海道に戻っても、この勢いは続くはずです。

「調子は悪くなかったんですが、（3回の）要所で甘くいってしまいました。接戦の試合になった中で先制点を与えてしまったことが悔しい。このあとはしっかりと応援するだけです。」

「勝つのと負けるのでは大きな違いなんだけど、勝ったから負けたからじゃなくて、（采配面で）おれがミスしたのを選手が取り返してくれた。野球というのはこういうことが起こりうるから怖いよね。最後まで選手は本当に頑張ってくれた。ここのところ1点差まで行っているのに勝てないと言われてきたところで（中田）翔があそこで打ってくれてうれしい。個人的には、反省して朝まで眠れない試合になったかな（苦笑）」