

沸き起こる思い

延長戦に決着をつける一撃が、右翼・大谷選手のはるか上を通過していきました。1-1の11回裏無死二、三塁。5番手・増井選手が投じた渾身のストレートは代打小笠原選手に弾き返され、手痛い3ランがオレンジに染まるスタンド中段に突き刺さりました。昨年の日本シリーズ再戦は接戦の末、今季2度目のサヨナラ負けでリーグ最速の30敗目を喫しました。
3回に陽選手が看板直撃の特大弾を放ち、幸先良く先制。1点の援護をもらい、先発の吉川選手が日本シリーズ2戦2敗という悔しさを味わされた相手に7回1死まで無安打無失点と力投を見せました。「打たれたことはしっかり覚えています」と雪辱に燃える気持ちを投球で体現。8回2死からの連打で同点にされて降板したものの、昨年のリーグMVPという称号に違わぬ投球が戻ってきました。
本塁打の陽選手は、日本シリーズでこの日先発の澤村選手から死球を左手に受けていました。脳裏にはその事が消えることなく打席に入っていたことでしょう。最下位に低迷しているとはいえ、試合前に栗山監督は「色々と感じるものがある」と話しました。終盤まで1点を争う攻防を演じられたのも、昨年の覇者の意地がそれぞれに沸き起こったからだと言えます。
今年のジャイアンツ戦はこれで2勝1敗。昨年の頂上決戦の借りを返すチャンスは残っているだけに、5打数無安打に倒れた大谷選手は「明日取り返せるように一丸で戦います」と口を真一文字に結びました。相手が呼び覚ましてくれた感情を一つひとつのプレーにぶつけ、白星をつかみにいきます。
吉川投手 <8回、球数106、打者30、安打3、三振8、四球3、失点1、自責点1>

「ツーアウトランナーなしのフルカウントからヒットを許したところ、その後、厳しくいかないといけない打者に甘く入ってしまったところ、その2つがすべて。最後までリードを守れずに申し訳ないという気持ちです。チームの勝利を信じて応援します。」
栗山語録
Q.吉川選手が8回に追いつかれました。きょうは完封を期待されたのでは
「きょうはいけると思った。でも、こういう試合ってこういうものなのかもしれない。最後にタイミングが合ってしまったね。結果的にはもうちょっとちゃんと点を取らないと。勝てば乗っていけるという試合があるんだけど、吉川が吉川らしくなってきたのはよかったよね」
Q.11回無死二、三塁で満塁策という手もあったのでは
「それは誰と勝負するかという問題だから。後悔はしてません」
Q.大谷選手が久々のスタメンでした
「これがいい勉強になってくれればいいですね」