

広報レポート<160キロの衝撃>


スタンドに詰めかけたファンの視線が、大型ビジョンのスピードガンに注がれました。その数字にどよめきと歓声が沸き上がりました。「160km/h」。その瞬間、大谷選手は自信に満ち溢れた表情で、マウンドからベンチへと向かいました。立ち上がり、先頭打者をフォークで三振に取ると、2番打者もストレートで三振。そして、3番打者を1ボール2ストライクと追い込んでからの通算14球目でした。パ・リーグの投手としては史上最速となる一球で空振り三振に仕留め、80年のプロ野球史にまたその名前を書き込んだのです。
高校時代に一度記録した数字を、プロに入ってからも叩き出しました。しかし、当時とは思うところが違う様子です。「160キロを出す」ことを目標にしていた高校生は、プロ野球となり「勝つ」ことが目標に。160キロのスピードボールも「まっすぐという球種のひとつ」と言い、それを勝つための手段と考えます。
この日は広島のエース・前田健選手とのマッチアップでした。「対戦するのは打者ですけど、ゼロに抑えたいと思っていた」。先に点を取られれば、チームの勝ちから遠ざかる――。そんな思いを胸に、2回の先制ソロアーチ以降はピンチらしいピンチを作ることもなく、5回10奪三振と快投を披露。打線の逆転劇を呼び込みました。
打者としても逆転の口火を切る二塁打で出塁し、反撃ののろしを上げるホームも踏みました。その際に左足首を軽くひねったため大事を取って交代。ブルペン陣に後を託し、ベンチ裏で戦況を見守りました。アクシデントがあったとはいえ、試合序盤の衝撃が薄れることはありません。「暑い季節はもともと好きなんで」。前人未到の領域に入るのか。夏が近づき、期待はさらに高まります。
大谷選手<5回 打者18 球数71 安打3(本塁打1) 三振10 四死球0 失点・自責1>

「真っ直ぐで空振りを取ることがテーマだったので、その点では良かったかなと思います。本塁打は一番やっちゃいけないと反省していますが、カーブが要所で使えて、比較的納得いく球が多かったかなと思います」
栗山語録

Q.5回の集中打で5点を挙げて逆転しました
「客観的に見ると野手の間に打球が落ちる当たりが多かったけれど、こちらから見ればそういうことがないと中々点が取れる相手ではなかった。(同点、勝ち越し打の)若い中島、西川にとって大きなものになってくれたらと思います」
Q.大谷選手はプロ入り最速の160キロを計時
「だいぶ投げることからピッチングになり始めています。時間の問題だと思っていましたし、べース板の上でスピードがあるほど投球に幅が出るので。前回スワローズ戦のバレンティンに投げた辺りから、いい投げ方で力が伝わり出していると感じていました」
Q.しかし5回で降板
「クロスプレーで足を若干捻ったので。そのまま行かせるわけにいかない、やめた方がいいと判断しました」
Q.交流戦に入って初のカード連勝です
「いいんだけれど悪くはないというだけ。まだこういう位置にいるわけだし。次のベイスターズ、ドラゴンズは交流戦調子がいいので、必死になって今日のように全力で勝ちに行きます」