

広報レポート<戻すんじゃない。もっと上へ。>


ゲームセットの瞬間まで、ベンチで戦況を見つめる吉川選手の表情が緩むことはありませんでした。満足できないところも多い一方で、納得できるところもある。3年前にMVPに輝いた男だからこそ、感じられるものなのかもしれません。6回1失点という結果を、複雑な感情が同居する状態で受け止めているようでした。「本来であれば7回を投げ切ることがピッチャーの役目」。しかし、ストライクゾーンの中で勝負する”本来の姿”を見せることができたのも、また事実でした。
2012年に14勝を挙げて優勝に大きく貢献しながら、13年は7勝、14年は3勝と思うように勝ち星を重ねることができませんでした。吉川選手の生命線は、力強いストレートでファウルを取ってカウントを稼げるかどうか。昨シーズンの終盤戦で兆しが見え、今キャンプからオープン戦で手応えを感じるようになっていました。それでも吉川選手本人は、こう言い続けてきました。「3年前に戻すんじゃないんです。あの年よりも上に行きたいと思ってやってるんです」。試行錯誤を続けてきた上半身と下半身のバランスが整い始めたことで、自分自身との対決ではなく、最大の目的である相手打者を打ち取るためのピッチングに集中できています。シーズン2連勝。「続けて勝てたから勢いに乗れると思う」。チーム状態がいいうちに課題を克服し、困ったときこそ頼れる左腕に。再ジャンプを目論む1年が、最高の形でスタートしました。
先発が最少失点で我慢できれば、逆転劇につながっていくのが今のファイターズ。1点を追う4回には先頭打者・田中賢選手の四球を皮切りに打線が爆発し、一気に6得点を奪いました。1死満塁から逆転打を放ったレアード選手は、試合前の花束贈呈セレモニーに志願して参加し、障害を持つ少年から花束を受け取っていました。その花束を持って初のお立ち台に。「これにパワーをもらった。あの少年のために打った」。今年のプロ野球を象徴する言葉となっている『男気』を、助っ人が最大のチャンスで見せてくれました。2009年シーズン以来となる6年ぶりの7連勝。開幕ロケットダッシュを決めて突き進みます。
先発投手コメント

吉川投手
<6回 109球 打者28 安打7 三振5 四球3 失点・自責点1>
「野手の皆さんに助けられた内容となりました。本来であれば7回を投げきることがピッチャーとしての役目なのですが、6回に多く投げ過ぎてしまった。状態は特に良いというわけではなかったんですけど、スライダーを有効に投げることができたと思います」
栗山語録

Q.4回に一挙6点の猛攻
「ハーミッダ(の内野安打)がほんと大きい。習慣として全力で走るからつながるよね。その瞬間瞬間で自分が何をするべきかを考え、必死にプレーする。(田中)賢介もそうだけど、そういったプレーが若手の手本になっている」
Q.先発の吉川選手は2勝目
「球が強くなってきた。必死にバッターに投げていく事が大事で、それができていた。だからこそ勝たせてやりたかったよね」
Q.チームは7連勝
「何度も言う様だけれども、今できる事をきちんとやるだけ。そのための準備をしっかりして必死にやっていきます」