

広報レポート<救世主?いや、これが本来の姿>


試合を締めたピッチャーにウイニングボールを渡されるのではなく、自分で持ってチームメートとハイタッチを交わせる充実感。それは最初から最後までマウンドを譲らなかった先発投手にだけ許される特権です。ヒーローインタビューを待つベンチ裏でも頰は緩みっぱなしでした。吉川選手にとっての今季6勝目は、特別な意味のある白星になりました。「本当にうれしい」。その言葉には、興奮だけではなく、安堵感が含まれていたのは無理もありませんでした。
前回の完投勝利は2012年9月28日。”無双”とさえ言われたMVPイヤーの公式戦最終登板で飾った試合でした。あれから2年半。思うように結果が残せない時期でも、自分に言い聞かせてきたのは「2012年よりもレベルアップする」ということです。「昔に戻そう、って考えるともっとおかしくなる。体つきも、体力も変わっているんだから」。新しい吉川光夫像を追い求め、昨シーズンの後半でようやく見えた希望の光。イメージと動作が一致した今季、もがき苦しんできた男が本当に殻を破り、目標としてきた「完投勝利」という境地に達したのです。
「きょうは最初から絶対に完投しようと思っていました」。吉川選手自身の狙いはチームの助けにもなりました。前日は8投手がマウンドに上がるなど、最近は中継ぎ陣に負担がかかる展開が続いていました。そんな中での完投劇。守護神・増井選手は言います。「展開が展開なのでもちろん準備はしていました。でも、実際に試合で投げるのと投げないのでは全然違いますよ」。貯金は今季最多となる「13」。交流戦ではパ・リーグの”対抗戦勝利”が確定し、しかも、首位に立ちました。本来の姿を取り戻した”救世主”のおかげで、交流戦残り2試合を総力戦で取りに行くことができます。
先発投手コメント

吉川選手
<9回 球数123 打者32 安打6 三振6 四球2 失点・自責点2>
「本当に嬉しいです。何点取られても投げきる事が大事だと思っていました。序盤はストレートとスライダーだけで攻めきれ、後半にチェンジアップを残しておけたのが大きいですね。早打ちも分かっていたので初球から勝負する気持ちでした」
栗山語録

Q. 吉川選手のピッチングを振り返っていかがですか
「ヒーローインタビューで翔と並んでいるのを見て久々だなと思ったね。ボール自体は良かったし、だから最後も行くという判断になった。気持ちを前に出して投げてくれて本当に嬉しかった。(約1ヶ月振りの勝利に対して)負けていても内容が大切なので。内容がしっかりしたものであれば問題ないし、それよりも結果にとらわれずにやるべきことをやらないといけない」
Q. 中田選手が本塁打20本に到達しました
「まだ20号なんだという感じでした。もう40本打ってるもんだと思った。みんなが自己最速20本と言うけれども、別に数多くのホームランを打つことが偉いというわけではないので。満足することなく、もっともっと成長してもらいたい」
Q.満員の札幌ドームでした
「あの空気を感じながら野球ができることは幸せなこと。勝っても負けても成長させてもらえるよね」