

広報レポート<原点からの再スタート>


初回、先頭打者から2者連続で四球を許しました。今シーズン初めての一軍登板。「リラックスしないといけない」。中村投手の強い気持ちは自らを縛りつけ、体を制御できなくしていました。迎えた中軸打者との勝負。3番を空振り三振に取り、スイッチが入りました。4番打者を見逃し三振。そして、2死満塁から最後は一ゴロに打ち取り、無失点でのスタートを切りました。3回と5回に1点ずつを失ったものの、打線の援護もあってリードした状態で後続にバトンを渡しました。ピンチを背負っても大量点は許さない。まるで“何か”に後押しされているかのようでした。
2009年。春日部共栄高校の3年生エースは『埼玉のダルビッシュ』と称されるほどの投手に成長していました。右腕の名前は中村勝。主戦場は県営大宮公園野球場でした。「埼玉の大会といえばほとんどここでした」。マウンドから周りを見渡すと、懐かしさにも似た感覚が湧き上がってきました。「どんなマウンドだったかとかは、もう覚えてないですけどね」。2017年。8年ぶりに立った故郷のスタジアムは、確かに力を与えてくれていました。
昨年は右ひじを痛めてシーズン序盤の2試合に登板しただけで戦線離脱。日本シリーズ制覇に貢献できなかった悔しさの中でオフを過ごしました。キャンプ中には一軍マウンドを目前にして、今度は左足首をねん挫。チャンスを逃しながらも、イースタン戦で抜群の成績を残してきました。ようやくたどり着いた一軍マウンド。用意されたのは、最高の舞台でした。
『勝ち投手』という勲章までは、この大宮の地も与えてくれませんでした。中村投手の交代直後に中継ぎ陣が一気に攻め立てられ逆転負けを喫したのです。これも野球の神様からのメッセージなのでしょうか。「白星は自分自身の力で奪い取るものである」とーー。マウンドに立てる喜びを与えてくれた“原点”からの再スタート。ここからが本当の力の見せ所です。
先発投手コメント
中村投手
<5回 球数97 打者24 安打4 三振3 四球5 死球1 失点・自責点2>
「シーズン初めての登板だったのでやはり緊張しました。初回はなかなか自分をコントロールできなかった。ただ、そこを無失点でいけたのは大きかったと思います。フォアボールが多かったことは反省しないといけませんが、野手のみなさんのおかげで5回まで投げ切れて良かった。あとはチームが勝てるように応援します」
栗山語録

Q.中村勝投手の投球を振り返って
「勝たせてあげたかった」
Q.6回以降、雨が降ってきました
「全て同じ条件でやってるわけだから。オレが悪い。勝たせてあげられなかった」