

広報レポート<前進あるのみ>


プライスレスなシーンに目を奪われ、胸を揺さぶられました。千葉ロッテマリーンズの涌井投手を攻略しての快勝で、連敗を5でストップしました。バス2台に分乗し、宿泊先のホテルへ到着。荷物を受け取るとチェックインもせずに、その足で何人かの選手が暗闇へと姿を消しました。野球用具などをおもむろにアスファルトの上に無造作に置き、バットを振り始めたのです。この試合で2打点と活躍した中田選手、7回に満塁から走者一掃の三塁打を放った中島卓選手・・・と、1人、また1人と黙々と素振りを繰り返していました。この日は、福岡から空路、移動しての一戦。絶対的な疲労を実感している中でも、それぞれが責任感と使命感を持って、自主的にスイングチェックを行っていたのです。
雑談もせず、それぞれが自分の世界に入り込み、聞こえてくるのはバットが空気を切り裂く音のみ。かつての野球少年たちの原風景ともいえる、荘厳な場面に遭遇しました。大きな連敗を止め、一息ついた夜でした。それでも、首脳陣の指示でもなく、自らがアクションを起こしたのです。言葉にしなくても、絶対にあきらめないという執念が、伝わってきました。不振に陥っていた打線が奮起して、好投した有原投手を救いました。その盛り立てた野手たちの手を緩めない姿。交流戦、リーグ戦再開後と苦しんだ6月の最後となったこの日、決して折れない心を、何人もが通わせていました。
大きなチームの動きにも、表れています。新外国人選手のヤディル・ドレイク選手がこの日、ZOZOマリンで入団会見を行いました。野球大国と言われるキューバ出身の右打ち外野手です。会見を終えた、試合中のことでした。千葉ロッテマリーンズの協力を得て、隣接する室内練習場を借りて軽く体を動かしました。キャッチボールなどで、長距離移動で疲れた体をほぐした後、打撃練習を行ったのです。熱狂するグラウンドから上がる歓声は、耳へ届いていたでしょう。ごく一部のスタッフらが見守る中で、素振りを4回だけしてすぐに本格的なフリー打撃を敢行したそうです。
目にしたスタッフの1人は、こう証言しました。「1球目、1スイング目からちゃんとミートした。スイングも速い」。身体能力も高いとの評価で、いきなり希望を運んできました。この緊急補強も編成の全権を持つフロント、チーム統轄本部の折れない心の象徴でしょう。選手たちも、それを支えるチームも、前だけを見て進みます。厳しい状況に置かれていることは数字を見れば明らかですが、まだ初夏です。
先発投手コメント

有原投手
<8回 116球 打者31 安打8 三振1 四球2 失点・自責1>
「野手の方の守備にも助けられて、いい投球ができました。絶対に点を与えない強い気持ちで投げました。我慢して抑えていけば、点を取ってくれると思っていたので、心強かったです」
栗山語録

Q.有原投手が8回1失点
「最初戸惑っていたけど良かった。風が気になっていた感じだった。本人は安心するんじゃないかな。(シーズン序盤と)スピードとかは変わってなくても、明らかに違っている。やっと“らしく”なってきたな、と」
Q.打線も7回に集中打
「(6回までは)本当に考えたけどね。でも、石井のフォアボールなんかもそうだけど、打つように持っていける流れにできるかどうか。そういう形をいままで作れていなかった。これからもしっかりやっていく」